【セッションレポート】デジタル通貨プラットフォームにおけるブロックチェーン技術の活用と顧客データ保護としての障害・災害対策 #cm_odyssey
7/16(火)Classmethod Odyssey ONLINE ユースケース編にて森 浩貴さん(株式会社ディーカレットDCP)が登壇されたセッション【デジタル通貨プラットフォームにおけるブロックチェーン技術の活用と顧客データ保護としての障害・災害対策】のレポートを本記事ではお伝えします。
概要
弊社が運営するデジタル通貨プラットフォームにおける「ブロックチェーン技術の活用」と「障害・災害対策」に焦点を当てます。まず、ブロックチェーン技術がデジタル通貨の取引の透明性を高め、セキュリティを向上させる基本的な仕組みについて説明します。そして、ブロックチェーンシステムの障害・災害対策の実現方式と課題について議論します。
レポート
自己紹介
- 森 浩貴氏
- 株式会社ディーカレットDCP クラウドチームヘッド
- 独立系中小SIer、AdTechベンチャー企業、ライブコマース事業立ち上げ、広告系事業立ち上げ(CTO)を経て、株式会社ディーカレットDCPに入社
- AngelHack Tokyo 2019運営チーム
- Stanford University CS-230 Deep Learning 一部翻訳
- Covid-19, your community, and you - a data science perspective 翻訳レビュー
事業内容
- デジタル通貨プラットフォーム事業をサービス展開している
- デジタル通貨DCJPY
- 価値が変動しない円建てのデジタル通貨
- 銀行型のデジタル通貨
- 発行主体は民間銀行
- 預金として位置づけられる(預金のデジタル化)
- 預金にある円通貨からディーカレットDCP様のプラットフォーム上でデジタル通貨を発行して、決済を行う
- デジタル通貨プラットフォームには、Financial ZoneとBusiness Zoneの2層がある
- Financial Zone: 金融機関が管理・運営(預金)
- Business Zone: 事業者が運営・参画(決済)
- IBC(Inter-Blockchain Communication) でBuisiness Zone同士の相互接続を行い、現金の流通コストを下げて事業者がより効率的に取引できる世界観を目指している
- 2024年7月商用化リリース
更に詳しく知りたい方は、ディーカレットDCP様のWebサイトやホワイトペーパーをご確認ください。
ブロックチェーン技術の活用と顧客データ保護としての障害・災害対策
- デジタル通貨は預金として扱われるため、システムにおいては金融機関と同等の対応が必要(=FISC安対基準準拠が必要)
- ブロックチェーンは、バリデータとリスナーの2種類のノードが相互接続する
- バリデータノード: 投票権があり、過半数のバリデーターが合意するとブロックが生成される
- リスナーノード: ブロックを取り込む
- ブロックチェーン技術は耐障害性に優れており、金融機関等で求められる可用性・耐障害性を満たすのに有用
- バリデータノードの過半数が正常稼働していれば、サービス継続可能
- 1ノードさえ残っていれば、完全なデータ復旧可能
- ブロックチェーンは、デジタル通貨プラットフォームとの親和性も高い
- Business Zone同士をつなぐMesh構成を、IBCによって少ないコストで実現可能
- How Does Mesh Network Allow IoT Devices To Communicate? - BoostHigh
- AWSでのAZ障害対策
- EC2(Auto Scaling)でバリデータノードとリスナーノードをマルチAZ構成で構築している
- EBSスナップショットでバックアップを取得している
- AWSでのリージョン障害対策
- 大阪リージョンにリスナーノードを起動
- 東京リージョンと大阪リージョンでデータ同期を行っている
- Global Acceleratorでトラフィックを制御している
- 障害時にGlobal Acceleratorのトラフィック転送先を切り替えて、大阪リージョンのバリデータを稼働状態にする
- AWS Global Accelerator(アプリケーションの可用性とパフォーマンスを向上)| AWS
これからの課題
- ブロックチェーン技術の課題
- 時間経過に伴ってブロックデータが増えるため、データ使用に関するコストが増える
- コミュニティが活発なため、この先2~3年で解消する方法が出てくる可能性はある
- バリデータの合意形成の待ち時間がかかるため、大量のトラフィックを処理する際に時間がかかる
- パブリッククラウドでFISC安対基準に準拠するうえでの課題
- オンプレミス環境を前提としているため、クラウド環境への読み替えに時間がかかる
- 前例がほとんどないため、実現方式検討に時間がかかる・実現方式の妥当性がわからない
感想
このセッションを通じて、デジタル通貨プラットフォーム事業の概要と、そこで活用されているブロックチェーン技術の重要性を理解することができました。
特に印象的だったのは、ブロックチェーン技術が金融システムに求められる高い可用性と耐障害性を満たすのに非常に適していることです。
また、マルチリージョンのホットスタンバイ構成における具体的な障害対策について聞くことができ学びになりました。(Global Acceleratorを使ったトラフィックの振り分け・リージョン間のデータ同期等)
一方で、ブロックチェーン技術やクラウド環境でのFISC安対基準準拠に関する課題も提示されました。クラウド上で金融系・ブロックチェーンを活用したシステム構築を予定されている方の参考になる内容と感じました。
以上、AWS事業本部の佐藤(@chari7311)でした。